アニメ「月がきれい」第7話で
後楽園からの帰るルートが不自然

今期、「月がきれい」というアニメが放送されていますが、埼玉県川越市が舞台のオリジナルアニメ(原作コミックや原作小説が存在しないアニメ)ということで視聴してみました。
和光市から川越市内へは電車1本で/車などで川越街道を走れば行くことが出来る近場の観光地。また、都内から「川越市行き」の列車に乗って帰宅することもあるため、私たち和光市民にとっても「川越」は馴染みのある地名です。

ちなみに川越が舞台のアニメではありますが、テレ玉(埼玉県の地域テレビ局)では放送されていないようです。
東京MXテレビ(東京都の地域テレビ局)やBS11(全国放送の衛星テレビ局)、または動画配信サイトで視聴することが出来ます。

視聴して感じた疑問

未視聴者には少しネタバレですみません。
第7話(放送8回目)では後楽園からの帰途につくシーンが描かれていますが、このシーンのとある部分に疑問を持ってしまいました。
西武鉄道車両に乗車しているのはおかしくはないか?と。

第7話(放送8回目)での帰りの電車内

どこまで帰るのか?

後楽園駅から何駅まで向かうのか?それによっては西武鉄道の車両に乗ることもおかしくはありません。
第6話(放送6回目)を見ると、安曇小太郎が出版社に出向く際に西武新宿線の「本川越駅」から乗車しているシーンが描かれています。
つまり、自宅最寄りの西武鉄道の駅は「本川越駅」であると考えられます。
登場人物の生徒は皆、同じ川越市立中学校に通学していることから、他のメンバーも同様に「本川越駅」の近くに住んでいると考えられます。

第6話(放送6回目)では本川越駅から乗車している

西武「本川越駅」と東武「川越市駅」は近い

ここで抑えておきたいポイントがあります。
西武鉄道新宿線の本川越駅(ほんかわごえ)と東武鉄道東上本線の川越市駅(かわごえし)は歩いて行けるほど距離が近いということです。

帰宅に使える駅が2つある

よって、登場人物達は自宅に帰るにあたって「本川越駅」でも「川越市駅」でもどちらの駅に向かっても良いということになります。

後楽園から川越市内には東武東上線「川越市駅」下車が安くて早い

後楽園駅から帰宅するにあたり、一般的な考え方をすれば「安くて」「早い」ルートが選ばれるのが普通かと思います。
常識的に考えるパターンをそれぞれ調査してみました。

後楽園から川越市内への4つのルート

ルートは4つある

前述の通り、登場人物達が帰宅するにあたっては「本川越駅」と「川越市駅」の2つ選択肢があります。
この2つの駅に向かう方法を調べてみたところ、4つのルートが考えられることがわかりました。
※遠回りをすればもっと多くのルートは存在します。

本川越駅と川越市駅の利便性は?

本川越駅は西武新宿線の終着駅ですので、この駅を通るすべての列車が停車します。
川越市駅は東武東上線の途中駅ですが、この駅を通る“下り列車”はすべての列車が停車します。
ただし、有料で着席保証のTJライナーの上り列車だけは川越市駅を通過します。

今回の場面は後楽園からの帰宅で下りですので、いずれの路線でもすべての列車が停車します。

4つのルートの詳細

<4ルート共通の区間>
後楽園駅 ←東京メトロ丸ノ内線→ 池袋駅

<個別の区間>
ルート①:
池袋駅(乗り換え) ←東武東上線→ 川越市

ルート②:
池袋駅(改札内乗り換え) ←東京メトロ副都心線:東武東上線直通→ 川越市

ルート③:
池袋駅(改札内乗り換え) ←東京メトロ副都心線:西武線直通→ 所沢駅(改札内乗り換え) ←西武新宿線→ 本川越駅

ルート④:
池袋駅(乗り換え) ←西武線池袋線→ 所沢駅(改札内乗り換え) ←西武新宿線→ 本川越駅

乗り換えが一番楽なルートは①東上線

4つのルートのうち、乗り換えが一番楽なルートはどれか?
乗り換え回数で見ると ① と ② がそれぞれ池袋駅での乗り換え1回だけで済むことになります。
ルート②では改札内乗り換えなので、ルート①よりも有利……かと思われるかもしれません、実は①が一番楽なのです。

丸ノ内線ホームと副都心線ホームは連絡通路で繋がっているのですが、やや距離が離れています。
また、丸ノ内線は浅くところを、副都心線は深いところを走行しているため、地下深くに降りなければなりません。

丸ノ内線ホームから改札口までは階段を上がればすぐで、丸ノ内線改札口の目の前には東武東上線の改札口があります。
東上線改札口からホームへは、また階段を上がらなければなりませんが、それでも副都心線より近い場所にあります。

一方、西武池袋線への乗り換えですが、離れた位置にあるためだいぶ歩くことになり、その分時間もかかることになります。

座って帰れるルートは①東上線

西武池袋線と東武東上線は池袋駅が始発駅(終着駅)です。
つまり、ルート①とルート④では、待てば必ず座れるのですが、ルート④では所沢駅で西武新宿線に乗り換えなければなりません。
よって、ルート①ならば池袋駅からは自宅最寄り駅までずっと座ったままで居られることになります。

早いルートは①東上線、運が良ければルート②副都心線&東上線も

各ルートの所要時間はそれぞれ下記の通りです。

ルート①東上線     :約50分
ルート②副都心線&東上線:約60分(運が良ければFライナーで50分)
ルート③副都心線&西武線:約80分
ルート④西武線     :約70分

ただここで、ルート②でも約50分しかかからない場合があります。
それは池袋駅での乗り換えで、副都心線「Fライナー」に乗れた場合です。
Fライナーとは、横浜高速鉄道みなとみらい線の元町・中華街駅を出発し、東急東横線内を特急として走り、東京メトロ副都心線内は急行で、そして東武東上線または西武有楽町線&池袋線に直通する列車です。
東上線内は急行として運行し、川越市駅やその先の森林公園駅まで向かいます。

運行時間帯は日中に限られ、東上線直通のFライナーは約30分に1本しか運行されていません。
運が良ければ早く着くことができます。

ルート③でも同様に池袋線内は快速急行として運行し早く着くことができますが、所沢駅で西武新宿線に乗り換えなければなりません。

安いルートは②副都心線&東上線

各ルートの運賃はそれぞれ下記の通りです。

ルート①東上線     :きっぷ(現金)640円、PASMO(ICカード)628円
ルート②副都心線&東上線:きっぷ(現金)550円、PASMO(ICカード)545円
ルート③副都心線&西武線:きっぷ(現金)640円、PASMO(ICカード)627円
ルート④西武線     :きっぷ(現金)640円、PASMO(ICカード)628円

東京メトロは長距離であるほど運賃がお得になる傾向があります。
池袋駅で私鉄(西武、東武)に乗り換えるよりも、小竹向原(西武有楽町線に接続)や和光市(東武東上線に接続)まで東京メトロに乗ったほうがお得になります。
よって、一番長く東京メトロ線を利用するルート②が一番運賃が安くなります。

何を重視しても「川越市駅」が目的地となる

上記を踏まえ、疲れているから楽をして早く帰りたいといった場合はルート①、お小遣いが少ないから可能な限り安く帰りたいといった場合はルート②となり、いずれのルートにしても川越市駅へ向かうことになります。

安曇小太郎の金銭感覚

安曇小太郎ならば上記のどのルートを選びそうか?
第6話(放送6回目)にそのヒントが隠されています。

ICカードではなく現金できっぷを購入

第6話(放送6回目)では本川越駅から西武新宿まで向かう場面が描かれています。
東京やその近郊の鉄道では多くの場合で“きっぷ”よりも“ICカード”で乗車した方が安くなる傾向があります。
しかし、安曇小太郎は現金で470円のきっぷを購入しています。
ICカードは持っていないようです。

第6話(放送6回目)では現金で購入

第6話(放送6回目)では切符を購入

交通系ICカードは千円単位で前払いでチャージしなければならないですし、中学生のお財布事情では難しいのかもしれませんね。

470円は高いという金銭感覚

同じく第6話(放送6回目)のきっぷ購入シーンで、安曇小太郎は「高っけー」と言っています。
往復で940円もしますから、中学生にとっては結構な出費なのかもしれません。

やはりルート①かルート②を選ぶのではないだろうか

早くて楽なルートは①、安いルートは②だとわかりました。
第7話(放送8回目)での帰りの電車内のシーンを見ると、安曇小太郎は水野茜が隣にいるにも関わらず寝ているので、相当疲れている様子がうかがえます。
金銭感覚から言えばルート②になるのでしょうが、楽できるルート①を選ぶ可能性もあるのではないかと考えられます。
よって、やはりルート①かルート②を選ぶのではないだろうかと思います。

しかし……。

第7話(放送8回目)での帰りの電車で疲れている様子

乗車していた西武車両

横からのシーンしかありませんが、帰りの電車は西武6000系に乗車しているように見えます。
それは、外からのシーンだけではなく、中の座席を見ても西武6000系である可能性が高いように思います。

第7話(放送8回目)での乗車している車両の外観

西武6000系に乗車できる可能性はルート③④だけではない

西武6000系だから西武線を利用している。
そう決めつけるのはまだ早いかもしれません。

西武線を使うルートは、西武池袋線や西武新宿線を利用するルート③またはルート④となりますが、ルート②でも西武6000系に乗れる可能性があります。

ルート②は、丸ノ内線&副都心線&東上線というルート。
西武線は利用しないルートですが、このうち副都心線で西武6000系に乗れる可能性があります。
東京メトロ副都心線と西武線は相互直通運転を行っており、各々の鉄道会社の車両が、相手方の線路を運行することがあるのです。

西武6000系で言えば、副都心線内は渋谷~小竹向原~和光市を走行します。
西武線からの直通列車は小竹向原から副都心線に乗り入れて渋谷方面へと向かい、和光市とは関係無さそうに思いますが、現実としては西武6000系車両は和光市まで乗り入れています。

音まで聞くとルート②はあり得ないことがわかる

ルート②でも西武車両に乗り合わせる可能性があることはわかりましたが、アニメにはもう2つ注目すべきポイントがありました。

1つは地上を走行していること

当該シーンでは西武6000系が走行している場面は地上であることが確認できます。

ルート②でも、地上区間は存在します。
地下鉄成増駅を出て、白子川を超えるあたりから和光市駅に至るまでは地上区間となります。

1つは踏切の音がしていること

当該シーンの音を聞くと踏切の音がしています。
しかし、ルート②の地上区間、地下鉄成増駅から和光市駅までに踏切は存在しません。

よって、アニメのシーンはルート②はあり得ないとわかりました。

電車は、事故などで運用が変更されて、普段は走らない区間を走ることがあります。
例えば普段は東京メトロ線内渋谷~和光市を走行している東急の車両が、有楽町線新木場に向かうということは過去にありました。
しかし、西武車両が東上線内を走行することは過去にもないようですので、特殊ケースでもなさそうです。

東上線も出てくる

作中には実は東武東上線も登場しています。
第1話(放送1回目)で東上線が踏切を通過するシーンがあります。
よって、西武鉄道に限定して登場させているわけではなさそうです。

第1話(放送1回目)では東武東上本線も出てきた


……でも、こんな車両存在しないような(?)
・大きな窓が中央で2つに分離されている。(東上線の濃いめの赤いラインの車両では、たいていの場合は窓は完全に2つに分かれている。)
・扉の左右(横)に小窓がそれぞれある。(東上線ではこのような小窓がある車両は無いような…?)
・方向幕のすぐ左にランプまたはスピーカーらしくものがある。(記憶が定かではないですが、すぐ左にはなかった気がします。)

まとめ

上記までの通り、西武線に乗るメリットは何もありません。
しかし、同様に上記の通り、西武線を利用するルートで乗車しない限りは、アニメで出て来た車両&地上&踏切の組み合わせはあり得ません。

よって、アニメ「月がきれい」第7話(放送8回目)で、後楽園からの帰るルートは現実的ではなく不自然であると結論づけたいと思います。

ただ、西武線を使うルートは絶対にあり得ないかというと、東上線が運転を見合わせてしまい振り替え輸送で利用するパターンはあるかとは思います。

※フィクションなのに、時間を掛けて自分は一体何をやっているのだろうと……。無駄にしてしまった時間については考えないことにしました。

※2020/01/31括弧書きを追記