※この記事は 2016-12-29 に書き留めたものを本日公開したものです。

【荒川CR(上流域:埼玉県)】サイクリングロードで自転車並進はいけないことなのか?
~注意をきっかけに初めて学んだ法律と、そもそも自転車に乗る目的までを考えた~

※法律および条例は2016-12-29(平成28年12月29日)現在のものです。
 法律および条例は改正されている可能性があります。

■注意されたらしい「自転車は一列に走らないとダメだよ!」。

先日友人2人と荒川(あらかわ)の河川敷(通称:荒川サイクリングロード、荒川CR)を走行しているときのこと。
入間大橋(いるまおおはし)から上江橋(かみごうばし)へ向かっている途中で、
ゴルフのカート(?)(ゴルフについては全くの無知なのでモノや用語がわからずすみません)らしき、
タイヤの付いた何かをそれぞれ引いている数人とすれ違いました。

その際に、ぶつかったとかすれすれだったとかそんなことはなく普通に対向しただけなのですが、
対向に居た最前列の男性が「自転車は一列に走らないとダメだよ!」と言ってきたと友人は言うのです。
たぶん彼(注意してきた人)の言うことは正しいのだろうと思う。けれど正しいとは断定できない。
友人と楽しく自転車に乗っていたのですが、しばらく考え込んで(結論は出ず)無言になってしまいました。

違反かどうかは置いといて、とりあえず前後に誰も居なければ併走しながら楽しく会話。
ミラーも付けているので、前後に人影が見えれば(暗黙的に)友人が前、自分が後に位置し、1列で走行していました。

ただ、ゴルフの人達とすれ違ったときは友人の疲れもあって速度が乱れ完全に一列になりきれず、
友人の自転車の後輪半分と、自分の自転車の前輪半分が並行するような形ですれ違いました。
それに不満を覚えて大きな声を出したのだと思います。

大きな声が出ていたことは自分も気付いていたのですが、
彼の後ろに続くゴルフメンバーと会話をしているのだろうぐらいに思っていましたが、
友人曰く注意を受けたとのことでした。

■初めて知った、道路交通法で自転車の並進は“基本的に”「禁止されている」こと

マナーではあると思って1列になるように心掛けては居たものの、
それまでの人生で自転車について学ぶ機会は独学以外にはなく、
併走が禁止されている違反行為なのかどうかわかりませんでした。
そこで法律を調べてみました。

道路交通法
 第三章 車両及び路面電車の交通方法 
  第一節 通則
   第十九条(軽車両の並進の禁止)
    軽車両は、軽車両が並進することとなる場合においては、他の軽車両と並進してはならない。

なんと法律で明確に禁止されていました。
しかも罰則まであります。

道路交通法
 第五章 道路の使用等 
  第八章 罰則 
   第百二十一条
    次の各号のいずれかに該当する者は、二万円以下の罰金又は科料に処する。 

    五
     第十七条の二(軽車両の路側帯通行)第二項、
     第十九条(軽車両の並進の禁止)、
     第二十一条(軌道敷内の通行)第一項、
     第二項後段若しくは第三項、
     第二十五条(道路外に出る場合の方法)第一項若しくは第二項、
     第三十四条(左折又は右折)第一項から第五項まで、
     第三十五条の二(環状交差点における左折等)、
     第六十三条の三(自転車道の通行区分)、
     第六十三条の四(普通自転車の歩道通行)第二項
     又は第七十五条の七(本線車道の出入の方法)
     の規定の違反となるような行為をした者 

つまり、併走して違反と認められた場合は最高2万円支払わなければならないそうです。
このような法律があるとは知りませんでした。

なお、自転車が「軽車両」である根拠は以下の通りです。

道路交通法
 第一章 総則
  第二条 (定義)
   この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

    十一 軽車両
     自転車、荷車その他人若しくは動物の力により、又は他の車両に牽引され、
     かつ、レールによらないで運転する車(そり及び牛馬を含む。)であつて、
     身体障害者用の車いす、歩行補助車等及び小児用の車以外のものをいう。 

■並進しても良い場合がある。

前述では、道路交通法で自転車の並進は「基本的に」禁止されていると記述しましたが、
例外(自転車特例)もあるようです。

道路交通法
 第三章 車両及び路面電車の交通方法 
  第十三節 自転車の交通方法の特例 
   第六十三条の五
    普通自転車は、道路標識等により並進することができることとされている道路においては、
    第十九条の規定にかかわらず、他の普通自転車と並進することができる。
    ただし、普通自転車が三台以上並進することとなる場合においては、この限りでない。

つまり、「自転車並進可」の道路標識がある公道に於いては道路交通法第19条は適用外とされ、
2列まで自転車の並進が可能であるとされています。
なお、3列以上はいかなる場合でも道路交通法では認められない…とも読み取れます。

今回、自分達は友人と2人のサイクリングだったので、違反ではなかった可能性があります。
さて、どうだったのでしょうか?

■並進可の標識は無かった。しかし、併走は違反ではなかった。

調べてみたところ、荒川河川敷の入間大橋から上江橋に至る道には
道路交通法で定める「自転車並進可」の標識は存在していませんでした。
よって、少しだけ前後輪が並行になったとしても自分達は違反行為をしていた……かというと、
実はそうではありませんでした。

この道には「自転車並進可」の標識どころか、すべての標識自体がありません。
どういうことかというと、この道は道路交通法が適用されない道だったのです。

道路交通法とは日本国領土内のすべての陸/水/建造物/浮遊物に適用されるわけではなく、
すべての道に適用されるわけではありません。
こんな話を1度は聞いたことは無いでしょうか?
「免許が無くても、免許が取れない子供でも、自敷地内ならば自動車を運転しても問題ない。」という話。
道路交通法が適用される道というものは限定されているのです。
農地などでは農作業用として、車検を受けていない車や、仕事の効率を上げるために改造された車など、
意外に走行しているもので、なんら法律違反ではありません。

荒川サイクリングロードに関して言えば笹目橋を境目として
荒川上流河川事務所と荒川下流河川事務所に管轄が分かれています。
今回の入間大橋から上江橋までは笹目橋より上流に当たりますので荒川上流河川事務所の管理下でした。

以下のPDFは上流ではなく荒川下流河川事務所のものにはありますが、
その中には
「河川敷道路は、人と自転車が混在する点で、道路交通法上の歩道に類似しているため、
道路交通法の表記と同じ「徐行」としました。」
との記述があります。
http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000093582.pdf
逆に読み取ると、つまりは河川敷道路は道路交通法が適用されない道路であると言っています。

つまりは、自分たちは行為は問題無いものであったと言えます。

■安心はできない併走。危険は回避し、ルールは学び、知っていることは教えてあげよう。

いくら併走は問題無かったと言っても、逆を言えば道路交通法で禁止されるぐらいですから
危険度の高い行為であると言えます。
自分たちのように、「前後に人が見える場合は一列になる」ということは心掛けた方が良いと思います。

自転車には免許がありません。
よってこのような法律を学ぶ機会がほとんどありません。
ルールは「知らなかったから」では許されませんので、どこかで学ぶ必要はあると思います。
今回の件で言えば、自動車運転免許の試験ならば引っかけ問題として出て来そうな感じの内容です。
本当は法律をすべて読み込んで頭に入れておければ良いのですが、現実的ではありません。
免許まで行かなくても講習ぐらい必須にすべきではないのかな、と思いました。
自分自身もそのほうが安心して乗れますし。
調べる機会を与えて下さった注意してきた人には少し感謝しています。

ただ、上記の通りすべて頭に入れておくことは不可能に近いです。
それが、自転車に乗るすべての人に強いることなど無理でしょう。
なので、自転車に乗る人は「誰しも必ず知らないことがある」ということを前提に、
大きな声を出す、怒鳴る、などではなく、みんなが楽しめる世の中になれるように
人々と接することができれば良いですね。

 

~余談~

■そもそも会話のないサイクリングは楽しいか?

今回併走していたのは全く意味のない行為だったのではなく、
友人と楽しく自転車に乗りたいという思いから併走して会話を楽しんでいました。
サイクリングロードでは良く会話もせずに1列に連なって走る自転車を目にします。
「会話もせずに自転車に乗って何が楽しいのか?」
それが友人と自分と2人の共通意見です。

しかし、それは人それぞれかと思います。
街乗りサイクリングならば会話をしながらが楽しいですし、
スポーツとしてのトレーニングならば会話は不要かもしれません。

■自分が自転車に乗る目的は……。

自分はロードバイクを購入してから「街乗り」「カジュアル」と言い続けています。
自分にとって自転車とは移動手段であってスポーツではない。
そもそも自動車免許は持っていないし、運動は苦手で
体育の成績は(たぶん)学生時代の平均を取れば最底辺の部類。
そんな自分がスポーツとして、スポーツ自体楽しめないのは明らかだったからです。

では何故ロードバイクを購入したのか。
やっぱり自転車が好きなんですよね。
子供の頃から(たぶん唯一)外で遊ぶことで好きだったものが自転車に乗ること。
後から知ったことですが、以前乗っていたクロスバイクは
クランクスプロケットの大スプロケットの歯車の数が52Tでした。
しかし、昨年買い替えたクロスバイクは48Tなのです。
クランクアームはいずれも175mmで同じでしたが、
以前のクロスバイクの方がペダルが地面に近くてカーブでは良くぶつけていました。

乗り心地が異なりスピードも出ないし、クロスバイクは完全街乗り用として
ママチャリっぽくしてパーツも沢山付けて重たく(特に後は故意に)しているので、
どうせならロードバイクが欲しいと感じ、購入しました。

なので、ロードバイクは近場以外に行くときの交通手段的な街乗り目的です。
ただ、それもサイクリングロードを走り始めてから
「移動手段」ではなく「ロードバイクに乗ることそのものが目的」にもなりつつありますが……。

■無線は有用か?新たなる問題も。

今回の注意があった以前からなのですが、
併走しないと声が聴こえないので友人は「無線が欲しい」と言っています。
今回、並進の法律を調べた際に一緒に無線についても調べてみました。

まず、「音(声)を送る」面から。
どのように設置しても風切り音が入ってしまう可能性があります。
声の音域だけを遅れるようにできているそれなりに無線が必要そうです。

次に「音(声)を聞く」面から。
スピーカーから音を出すとなるとそれなりの音量が必要そうになります。
だからといってヘッドホンやイヤホンを使うと違反になる可能性があります。
道路交通法では明確に禁止された条項は存在しませんが、
荒川CRで言えば東京都条例や埼玉県条例で違反となるようです。

東京都道路交通規則
 第1章 交通規制等
  第8条 (運転者の遵守事項)
   法第71条第6号の規定により、車両又は路面電車(以下「車両等」という。)の運転者が
   遵守しなければならない事項は、次に掲げるとおりとする。
 
    (5)
     高音でカーラジオ等を聞き、又はイヤホーン等を使用してラジオを聞く等
     安全な運転に必要な交通に関する音
     又は声が聞こえないような状態で車両等を運転しないこと。
     ただし、難聴者が補聴器を使用する場合又は公共目的を遂行する者が
     当該目的のための指令を受信する場合にイヤホーン等を使用するときは、この限りでない。
埼玉県道路交通法施行細則
 第10条 (運転者の遵守事項)
  法第71条第6号の規定による車両等の運転者が遵守しなければならない事項を次のとおり定める。

   (7)
    高音でカーラジオ等を聴く、イヤホーン等を使用してラジオ等を聴くなど
    安全な運転に必要な交通に関する音又は声が聞こえないような状態で車両を運転しないこと。
    ただし、難聴者が補聴器を使用する場合又は公共目的を遂行する者が当該目的のための
    指令を受信する場合にイヤホーン等を使用するときは、この限りでない。

自分も持っている骨伝導ヘッドホンは有用かと思ったのですが、
これは音を聞くだけで発することはできないので他にも考えなければ無さそうです。

なお、上記条例に記述のある「高音」とは「高い音」ではなく「強い音」や「大きな音」のことかと思われます。

■考えてみた、無線での会話。でもここまでする必要はあるのか?

上記の通り「音を送る」と「音を聞く」の両方ができなければなりません。
できるだけ“手持ちの機器”を使ってなんとか法律/条例違反とならずにできないか?
(手持ちの機器を使わなければ他にも方法があります。)
そこで考えたのが下記。

無線装置:スマートフォン
音を送る装置:Bluetoothで通話できるクリップ型の機器(自由なイヤホン/ヘッドホンが使える)
音を聞く装置:骨伝導ヘッドホン(Bluetooth接続)
その他に必要な機器:Bluetoothドングル

自分は上記はいずれも持っています。

まずは「スマホ」と「クリップ型の機器」をBluetoothで接続します。
クリップ型の機器にはマイクが内蔵されているので、
なるべく風の音が入らないようなところにクリップを挟みます。

次に「クリップ型の機器」と「Bluetoothドングル」を物理接続します。
クリップ型の機器には自由なヘッドホンが使えるのでBluetoothドングルをつなぎます。

最後に「Bluetoothドングル」と「骨伝導ヘッドホン」をBluetooth接続します。
骨伝導ヘッドホンで耳穴をふさがないことが重要です。

このようにすれば法律にも条令にも違反しません。
回線交換による通話だと時間ごとに料金を取られるので、
使い放題の格安SIMでデータ通信によりSkype/Facebook/LINEを使っての通話が良いと思います。
格安SIMだと使い放題の速度は200kbps以下だと思いますので、
それに耐えられるかどうかは……色々試さないといけないですね。

これの問題点は「電池が持つか?」と「人数分の機器が必要」ということ。
また、Bluetoothで2段接続していますので「音の遅延もかなり大きい可能性がある」ことです。
自分は良いですが、友人も同じように準備しなければ成り立ちません。
そこまでするかというと……まだ大声で会話した方が良さそうな気がします。

■法律以外にもある自転車ルール…埼玉県条例 ※荒川河川敷道路は適用外です

さて最後に、今回の入間大橋~上江橋は埼玉県内でしたので、
法律以外に埼玉県条例もチェックしておきたいと思います。

埼玉県道路交通法施行細則
 道路交通法(昭和35年法律第105号)、道路交通法施行令(昭和35年政令第270号)
 及び道路交通法施行規則(昭和35年総理府令第60号)の規定に基づき、
 同法及び同令並びに同規則を実施するため、この規則を制定する。

→道路交通法が適用される道で適用される条例となります。

埼玉県道路交通法施行細則
 第10条 (運転者の遵守事項)
  法第71条第6号の規定による車両等の運転者が遵守しなければならない事項を次のとおり定める。
   (4)
    かさをさし、物をかつぎ、物を持つ等視野を妨げ、又は安定を失うおそれのある方法で、
    大型自動二輪車、普通自動二輪車、原動機付自転車又は自転車を運転しないこと。
   (6)
    自転車を運転するときは、携帯電話用装置を手で保持しての通話若しくは操作をし、
    又は画像表示用装置に表示された画像の注視をしないこと。
   (7)
    高音でカーラジオ等を聴く、イヤホーン等を使用してラジオ等を聴くなど
    安全な運転に必要な交通に関する音又は声が聞こえないような状態で車両を運転しないこと。
    ただし、難聴者が補聴器を使用する場合又は公共目的を遂行する者が当該目的のための
    指令を受信する場合にイヤホーン等を使用するときは、この限りでない。

→傘さし運転は違反、スマートフォン/ゲーム機/パソコン等の操作は違反、
 解釈が微妙なところですがスマホホルダーに入れたスマホでも
 “テキストはOK”で“画像はNG”と読み取れそうです。
 地図アプリはどうなるんでしょうね?注視さえしなければ良さそうですが。
 (テキストにしろ画像にしろ、走行中の注視は危険ですね。)
 傘以外でもモノを持って視野を狭めた場合は違反なんですね。
 ヘッドホンやイヤホンについては前述の通りです。

違法駐車車両を移動した場合に徴収する負担金の額を定める規則
 道路交通法(昭和三十五年法律第百五号)第五十一条第二項、
 第三項又は第五項に規定する車両の移動に係る同条第十六項後段の規定による額は、
 次の表のとおりとする。

 車両の種類 / 負担金の額
 その他の車両 / 実費に相当する額

→自転車は表になく「その他の車両」になるため、
 自転車を止めていて撤去されてしまったとき、
 高額な返還費用の負担を求められた場合は「埼玉県条例違反」として
 逆に訴えることもできそうです。
 ただし…

埼玉県放置違反金に係る督促及び滞納処分並びに延滞金の徴収に関する規則
 第1条(趣旨)
  道路交通法第51条の4第4項の規定に基づき埼玉県公安委員会が
  納付を命ずる放置違反金(以下「放置違反金」という。)に係る
  督促及び滞納処分並びに延滞金の徴収に関する事項については、
  別に定めるもののほか、この規則の定めるところによる。
 第3条(延滞金)
  放置違反金について前条第1項の規定による督促をしたときは、
  次の各号のいずれかに該当する場合を除き、
  納付命令により通知した納付の期限の翌日から納付の日までの日数に応じ、
  当該放置違反金の額に年14.5パーセントの割合を乗じて
  計算した金額に相当する額の延滞金を徴収する。
 第3条 2
  前項の規定による延滞金の額に1,000円未満の端数があるときはその端数を、
  その全額が1,000円未満であるときはその全額を切り捨てる。

→要するに埼玉県公安委員会が認める金額ならば良いみたいです。
 延滞金まであるとは知らなかった。